2010.08/22 [Sun]
憧れの長次郎谷(ちょうじろうたん)
8月19日(木)~22日(日)
昨年映画化され話題になった新田次郎の「剱岳点の記」の舞台になった剱岳周辺で、3泊4日で行われた所属する山の会の指導員研修山行に参加する。
今回の研修では、映画の中で柴崎芳太郎たちが登頂に成功した長次郎谷からのルートをとって剱岳へ登る予定である。
また、今回の研修のカリキュラムは、岩稜や雪渓歩行、またテント生活技術の習得である。
8月19日(木)
参加者はリーダーを入れて9名で、朝6時半に集合し、10人乗りレンタカーで東海北陸道を走り、立山ICを出て10時過ぎに立山駅駐車場に着く。
平日だというのに近くの駐車場は満車状態である。
美女平までのケーブルが動いていないので、室堂までバスで直通である。
12時過ぎに室堂に到着し、準備を整え12時半前に出発する。
天気はよく、立山連峰や大日岳などが良く見渡せる。
みくりが池のほとりを通り、雷鳥荘から一下りして雷鳥平のテント場に着く。
眼前にはこれから登る雷鳥沢沿いの登山道がジグザグに続き、稜線上には剣御前小屋も小さく見える。
今回は、荷物をできるだけ少なくするようリーダーから言われていたが、どうしても余分なものが増え、重い荷物でつらい登りが2時間ほど続く。
午後3時過ぎやっと剱御前小屋の建つコルに到着する。
残念ながらガスがわき、剱岳は見ることができない。
コルからは今日からのベースキャンプになる剱沢が下の方に小さく見下ろせ、途中からは剱岳もガスの切れ間から姿を現す。
30分ほどかけて剱沢のテント場まで下り、早速テントを2張り設営する。
何度来てもここのテント場からの剱岳の雄姿はすばらしい。
今日はまだ平日のためかそんなにテントは多くない。
早速、夕食の準備にかかる。
今回は食料は軽量化のためすべてレトルト食品で、ご飯もα米なので、準備には時間がかからない。
食事をした後、暮れなずみ赤く染まりだした剱岳をあおぎ見て、食後のコーヒーを飲みながら至福のひとときを過ごす。
明日の行動に備えるため、午後7時過ぎにはテントに潜り込み早々に眠りに着く。
そんなに寒くなく、3シーズン用のシュラフでは暑いくらいである。
夜中にトイレに起きると、月明かりの中一点の雲もなく剱岳が聳えており、明日もいい天気が続くようである。
8月20日(金)
朝4時に起床する。
今日はいよいよ剱岳への登頂の日である。
朝食を済ませ、午前5時20分剱沢に向けて出発する。
小さな池のほとりから剱沢小屋を通り、20分ほど剱沢へ下ると、道は雪渓上を行くようになる。
リーダーよりできるだけアイゼンは付けないで歩くように言われ、始めのうちは慣れないため滑りそうになるが、慣れるとスプーンカット上に上手に靴を乗せて歩くことができる。
前には後ろ立山連峰が朝の光にシルエットで浮かんでいる。
武蔵谷、平蔵谷の出合を過ぎ、1時間ほどで長次郎谷出合に到着する。
両側が狭まった長い雪渓の長次郎谷が稜線に向けて突き上げている。
ところどころ雪渓が切れたところがあり、ブリッジ上の割れ目が大きな口をあけている。
登るに従いだんだんと傾斜が増してくる。
途中からどうしても不安になり、アイゼンを付ける。
中には最後までアイゼンなしで登りきった者もいる。
右手には八ツ峰の鋭い岩峰が連なっている。
8時半過ぎ、やっと長次郎谷上部に島状に張り出している通称「熊の岩」に到着する。
台地上にはテントが張られている。
八ツ峰の5・6のコルへはこのあたりから取り付くということである。
熊の岩から長次郎谷左俣に入り、更に上り詰めると、稜線直下で雪渓が切れて、岩壁を登る個所が現れる。
ザイルの助けを借りたりして、全員無事に通過する。
苦しい登りが続き、路傍に咲く花に心が和まされる。
最後のザレ場を登り詰め、10時40分、やっと全員剱岳北方稜線上の狭いコルに登りきる。
見下ろせば、登ってきた長次郎谷が急な角度で落ち込んでいる。
前には八ツ峰の岩峰が連なっている。
コルからはしばらく薄い踏み後の北方稜線上を歩き、午前11時20分過ぎやっと剱岳山頂に到着する。
山頂からは、東に八ツ峰の上に雲の中から鹿島槍ヶ岳が顔を出しているのが望まれる。
山頂でゆっくりと食事をとり、剱沢への一般登山道をとって12時少し前に下山にかかる。
さすがに一般道は登ってくる人が多い。
カニのヨコバイを通り、平蔵のコルに下り、長いクサリの付いた壁をトラバースし、前剱、一服剱を超えて、14時過ぎ剣山荘まで下る。
登山者で賑わう剣山荘から剱沢源頭を横切り、剱沢のテント場へと登り返し、午後3時過ぎ到着する。
10時間近くに及ぶ長い行程であったが、憧れの長次郎谷から剱岳に登ることができ、皆気持ちのいい疲れで、夜はぐっすりと眠りに着く。
8月21日(土)
今日は普段あまり登られていない剱御前に登り、別山を経て帰ってくる予定である。
朝起きて外に出ると、今日も一点の雲もない素晴らしい天気になりそうである。
ゆったりとした行程なので、午前6時頃に出発する。
剣山荘から剱岳から続いている尾根上のクロユリのコルに登る。
朝日が差し込み、後ろ立山連峰が剱岳の後ろにシルエットで浮かび上がる。
この道はクロユリのコルから先は最近はあまり歩いていないらしく、無理やりガレ場を登り、薄い踏み後を探しながらの歩行が続く。
ハイマツ帯をかき分け、やっと稜線上に飛び出す。
しばらく登り、9時前に剱御前に着く。
ここからの剱岳の眺めも素晴らしいものがある。
剱御前からはよく踏まれた道となり、すぐに剱御前小屋の建つコルに出る。
ここから立山方面へ行く稜線を少し登り、午前10時15分、祠の建つ別山山頂に着く。
5分ほどで最高点のある山頂に行き、ゆっくりと山頂からの眺めを堪能する。
別山からは急な下山路を直接剱沢に下り、12時過ぎにテントサイトに帰ってくる。
その後、今日はのんびりと過ごすことができ、各人思い思いに昼寝をしたり、喉を潤したりしながら、いつまで見ていても見飽きない眼前の剱岳を前にして、今回の山行を振り返りながらゆったりとした至福の時を過ごす。
夕食の後、リーダーを囲んで今回の山行の各自の役割などの反省をし、次回以降の山行に生かすことにする。
夜は少し風が出たが、最後の夜がゆっくりと更けていく。
8月22日(日)
4日目、今回の山行の最後の日である。
朝4時に起床して、テントをたたみ帰り支度をする。
4日間を過ごした名残惜しいテントサイトを後に、剱沢を登り返し帰途に着く。
剱御前のコルから最後の剱岳の雄姿を目に焼き付ける。
遠くには弥陀ヶ原の上に薬師岳や槍・穂高まで遠く見渡せる。
雷鳥平のテントサイトには休日のためカラフルなテントがたくさん張られている。
室堂まで最後の登りをこなし、みくりが池に移る立山を見ながら午前8時半過ぎ室堂ターミナルへ着く。
バス、ケーブルと乗り継ぎ、10時過ぎ立山駅の駐車場へ戻り、近くの温泉で汗を流し、東海北陸道を走り、午後4時、無事に名古屋へ帰り着き、4日間の日程を終わる。
今回の研修では、岩稜や雪渓歩きの技術の習得が目的であった。
特に雪渓上ではなるべくアイゼンを付けずに歩くようにリーダーから言われていた。
夏の雪渓はスプーンカットになっており、それを利用すれば上手に歩けるのだが、傾斜が急になってくると怖さが出てしまい、最後に少しアイゼンを使用することになってしまった。
メンバーの中には最後まで付けなかった人もいたので、自分としては努力が足りなかったかな…と、反省である。
途中少し体調を壊してしまい、仲間に迷惑をかけてしまったのではないかと反省である。
また、リーダーから事前に言われていたのに、荷物を減らすことができず、重い荷物を担いでの登りで、息がはずんでしまい、これも反省材料である。
研修が主体の山行であったが、憧れの長次郎谷を登ることができたことは、私の山行の一生の思い出として残っていくであろう。
いろいろと身に付けて行かなければならない技術が多いが、今後とも安全・安心登山のためには精進する努力を惜しまないようにしていきたい。
最後に、このような機会を与えてくださったリーダーはじめ、同行した皆さんに感謝を申し上げたい。
山遊人

昨年映画化され話題になった新田次郎の「剱岳点の記」の舞台になった剱岳周辺で、3泊4日で行われた所属する山の会の指導員研修山行に参加する。
今回の研修では、映画の中で柴崎芳太郎たちが登頂に成功した長次郎谷からのルートをとって剱岳へ登る予定である。
また、今回の研修のカリキュラムは、岩稜や雪渓歩行、またテント生活技術の習得である。

8月19日(木)
参加者はリーダーを入れて9名で、朝6時半に集合し、10人乗りレンタカーで東海北陸道を走り、立山ICを出て10時過ぎに立山駅駐車場に着く。
平日だというのに近くの駐車場は満車状態である。
美女平までのケーブルが動いていないので、室堂までバスで直通である。
12時過ぎに室堂に到着し、準備を整え12時半前に出発する。

天気はよく、立山連峰や大日岳などが良く見渡せる。
みくりが池のほとりを通り、雷鳥荘から一下りして雷鳥平のテント場に着く。

眼前にはこれから登る雷鳥沢沿いの登山道がジグザグに続き、稜線上には剣御前小屋も小さく見える。

今回は、荷物をできるだけ少なくするようリーダーから言われていたが、どうしても余分なものが増え、重い荷物でつらい登りが2時間ほど続く。
午後3時過ぎやっと剱御前小屋の建つコルに到着する。
残念ながらガスがわき、剱岳は見ることができない。
コルからは今日からのベースキャンプになる剱沢が下の方に小さく見下ろせ、途中からは剱岳もガスの切れ間から姿を現す。

30分ほどかけて剱沢のテント場まで下り、早速テントを2張り設営する。
何度来てもここのテント場からの剱岳の雄姿はすばらしい。

今日はまだ平日のためかそんなにテントは多くない。
早速、夕食の準備にかかる。
今回は食料は軽量化のためすべてレトルト食品で、ご飯もα米なので、準備には時間がかからない。
食事をした後、暮れなずみ赤く染まりだした剱岳をあおぎ見て、食後のコーヒーを飲みながら至福のひとときを過ごす。


明日の行動に備えるため、午後7時過ぎにはテントに潜り込み早々に眠りに着く。
そんなに寒くなく、3シーズン用のシュラフでは暑いくらいである。
夜中にトイレに起きると、月明かりの中一点の雲もなく剱岳が聳えており、明日もいい天気が続くようである。
8月20日(金)
朝4時に起床する。
今日はいよいよ剱岳への登頂の日である。
朝食を済ませ、午前5時20分剱沢に向けて出発する。

小さな池のほとりから剱沢小屋を通り、20分ほど剱沢へ下ると、道は雪渓上を行くようになる。

リーダーよりできるだけアイゼンは付けないで歩くように言われ、始めのうちは慣れないため滑りそうになるが、慣れるとスプーンカット上に上手に靴を乗せて歩くことができる。
前には後ろ立山連峰が朝の光にシルエットで浮かんでいる。

武蔵谷、平蔵谷の出合を過ぎ、1時間ほどで長次郎谷出合に到着する。
両側が狭まった長い雪渓の長次郎谷が稜線に向けて突き上げている。

ところどころ雪渓が切れたところがあり、ブリッジ上の割れ目が大きな口をあけている。

登るに従いだんだんと傾斜が増してくる。
途中からどうしても不安になり、アイゼンを付ける。
中には最後までアイゼンなしで登りきった者もいる。
右手には八ツ峰の鋭い岩峰が連なっている。
8時半過ぎ、やっと長次郎谷上部に島状に張り出している通称「熊の岩」に到着する。
台地上にはテントが張られている。


八ツ峰の5・6のコルへはこのあたりから取り付くということである。

熊の岩から長次郎谷左俣に入り、更に上り詰めると、稜線直下で雪渓が切れて、岩壁を登る個所が現れる。

ザイルの助けを借りたりして、全員無事に通過する。
苦しい登りが続き、路傍に咲く花に心が和まされる。

最後のザレ場を登り詰め、10時40分、やっと全員剱岳北方稜線上の狭いコルに登りきる。

見下ろせば、登ってきた長次郎谷が急な角度で落ち込んでいる。

前には八ツ峰の岩峰が連なっている。

コルからはしばらく薄い踏み後の北方稜線上を歩き、午前11時20分過ぎやっと剱岳山頂に到着する。
山頂からは、東に八ツ峰の上に雲の中から鹿島槍ヶ岳が顔を出しているのが望まれる。

山頂でゆっくりと食事をとり、剱沢への一般登山道をとって12時少し前に下山にかかる。
さすがに一般道は登ってくる人が多い。
カニのヨコバイを通り、平蔵のコルに下り、長いクサリの付いた壁をトラバースし、前剱、一服剱を超えて、14時過ぎ剣山荘まで下る。

登山者で賑わう剣山荘から剱沢源頭を横切り、剱沢のテント場へと登り返し、午後3時過ぎ到着する。
10時間近くに及ぶ長い行程であったが、憧れの長次郎谷から剱岳に登ることができ、皆気持ちのいい疲れで、夜はぐっすりと眠りに着く。
8月21日(土)
今日は普段あまり登られていない剱御前に登り、別山を経て帰ってくる予定である。
朝起きて外に出ると、今日も一点の雲もない素晴らしい天気になりそうである。
ゆったりとした行程なので、午前6時頃に出発する。
剣山荘から剱岳から続いている尾根上のクロユリのコルに登る。
朝日が差し込み、後ろ立山連峰が剱岳の後ろにシルエットで浮かび上がる。


この道はクロユリのコルから先は最近はあまり歩いていないらしく、無理やりガレ場を登り、薄い踏み後を探しながらの歩行が続く。
ハイマツ帯をかき分け、やっと稜線上に飛び出す。

しばらく登り、9時前に剱御前に着く。
ここからの剱岳の眺めも素晴らしいものがある。

剱御前からはよく踏まれた道となり、すぐに剱御前小屋の建つコルに出る。

ここから立山方面へ行く稜線を少し登り、午前10時15分、祠の建つ別山山頂に着く。
5分ほどで最高点のある山頂に行き、ゆっくりと山頂からの眺めを堪能する。
別山からは急な下山路を直接剱沢に下り、12時過ぎにテントサイトに帰ってくる。
その後、今日はのんびりと過ごすことができ、各人思い思いに昼寝をしたり、喉を潤したりしながら、いつまで見ていても見飽きない眼前の剱岳を前にして、今回の山行を振り返りながらゆったりとした至福の時を過ごす。
夕食の後、リーダーを囲んで今回の山行の各自の役割などの反省をし、次回以降の山行に生かすことにする。
夜は少し風が出たが、最後の夜がゆっくりと更けていく。
8月22日(日)
4日目、今回の山行の最後の日である。
朝4時に起床して、テントをたたみ帰り支度をする。
4日間を過ごした名残惜しいテントサイトを後に、剱沢を登り返し帰途に着く。
剱御前のコルから最後の剱岳の雄姿を目に焼き付ける。

遠くには弥陀ヶ原の上に薬師岳や槍・穂高まで遠く見渡せる。

雷鳥平のテントサイトには休日のためカラフルなテントがたくさん張られている。

室堂まで最後の登りをこなし、みくりが池に移る立山を見ながら午前8時半過ぎ室堂ターミナルへ着く。

バス、ケーブルと乗り継ぎ、10時過ぎ立山駅の駐車場へ戻り、近くの温泉で汗を流し、東海北陸道を走り、午後4時、無事に名古屋へ帰り着き、4日間の日程を終わる。
今回の研修では、岩稜や雪渓歩きの技術の習得が目的であった。
特に雪渓上ではなるべくアイゼンを付けずに歩くようにリーダーから言われていた。
夏の雪渓はスプーンカットになっており、それを利用すれば上手に歩けるのだが、傾斜が急になってくると怖さが出てしまい、最後に少しアイゼンを使用することになってしまった。
メンバーの中には最後まで付けなかった人もいたので、自分としては努力が足りなかったかな…と、反省である。
途中少し体調を壊してしまい、仲間に迷惑をかけてしまったのではないかと反省である。
また、リーダーから事前に言われていたのに、荷物を減らすことができず、重い荷物を担いでの登りで、息がはずんでしまい、これも反省材料である。
研修が主体の山行であったが、憧れの長次郎谷を登ることができたことは、私の山行の一生の思い出として残っていくであろう。
いろいろと身に付けて行かなければならない技術が多いが、今後とも安全・安心登山のためには精進する努力を惜しまないようにしていきたい。
最後に、このような機会を与えてくださったリーダーはじめ、同行した皆さんに感謝を申し上げたい。
山遊人
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