8月26(日)~28日(火)
今年最後の夏山山行として、山仲間2人といっしょに北アルプス奥黒部の「赤木沢」の沢歩きと「薬師岳」に2泊3日の日程でテント山行をする。
今回の山行は、2年前に連れて行ってもらった赤木沢を”自分の力で歩くことができるかどうか”を確認するための山行でもある。
8月26日(日)
朝4時に集合して、東海北陸道、北陸道を走り、立山ICを出て有峰林道を走り、午前8時過ぎ登山口の折立に着く。
夏休み最後の日曜日のためか、道路沿いの駐車場は満車状態で、道路まで車があふれている。
奥の方の舗装されていない駐車場に何とか駐車する。
準備をして、8:42折立ヒュッテ前の登山口から歩き始める。
今回はテント山行で、しかも沢用具もあるため、荷物が15kgを越えてしまう。
愛知大学の遭難碑「十三重の塔」の前を過ぎ、いきなりの太郎坂の急坂を登り始める。
久し振りのテント山行で荷物の重さが肩に食い込みゆっくりのペースで登る。
2時間すこしかかり、10:50三角点のある休憩ベンチに着く。
ガスがかかりはじめ、周囲の山は何も見えない。
しばら歩いて樹林帯を抜け、太郎平から広がる広い尾根道を登っていく。
下山してくる登山者がかなり多い。
ガスの湧く中を五光岩の展望休憩地を過ぎ、太郎平を目指す。
5時間弱かかり、13:45やっと太郎小屋前に着く。
小屋前には小屋泊りの大勢の登山者が憩っている。
太郎小屋前から北へ薬師峠のテント場を目指す。
木道の敷かれた道を下り、14:00薬師峠のテント場に着く。
10張りほどテントが張られており、我々も適当な場所を見つけてテントを張る。
ここのテント場は、水場も近く、トイレも清潔なので快適に過ごせそうである。
夕食までしばらくテントの中で憩っていると、突然夕立が襲ってくる。
1時間ほどで夕立も上がり、午後5時過ぎから準備をして、食事をする。
風もなく思ったより寒くない。
夕方にはガスも切れ始め周囲の山々も見えてくる。
ゆっくりと夕食をとり、明日の赤木沢遡行の準備などをして、午後7時過ぎ就寝する。
夜中にトイレに起きると、満天の星がきらめき、明日の晴天が期待される。
8月27日(月)
今日はいよいよ赤木沢遡行の日である。
朝4時前に起床し、朝食を食べ、沢靴などの沢用品をサブザックに詰め、5:00に出発する。
太郎平に登ると周囲の山々がシルエットで浮かび上がってくる。
天気はよさそうである。
太郎平から薬師沢に向けて急な道を下る。
黒部五郎岳や北ノ俣岳に朝日が当たり始める。
薬師沢に下り、沢沿いの平坦な木道の道を行くとカベッケヶ原という気持ちのいい草原に出る。
7:10薬師沢と黒部川本流の出会いに立つ薬師沢小屋に着く。
小屋前のテラスで沢靴に履き替え、ヘルメットをかぶり沢歩きの準備をする。
午前7時半、小屋から梯子を下り、いよいよ黒部川に下りたち、沢歩きが始まる。
このあたりは黒部川の源流に近く、そんなに川幅は広くないが、1、2か所ゴルジュになったところをヘツリながら上流を目指す。
8:45黒部川本流がナメ滝状になった(ミニナイアガラの滝と呼ばれている)ところで、右手から赤木沢が流れ込んでいる。
左岸を少しヘツりいよいよ赤木沢に入る。
すぐに赤木沢特有の赤いナメ滝が現れる。
明るくきれいな赤木沢に、一緒に行った仲間から思わず感嘆の声があがる。
次々に素晴らしい滝が現れ、その上を気持ちよく歩いていく。
滝の上からみる澄んだ水が美しい。
ところどころ高巻きしたり、直接滝を登りながら赤木沢大滝を目指す。
11:00赤木沢最大の滝、「赤木沢大滝」の下に到着する。
滝の下で早めの昼食を食べる。
昼食後、大滝を越えるため左岸の垂直に近いガケを木につかまりながらよじ登り、滝上に出る。
滝上からは青い空に水晶岳がくっきりと見える。
ここからは、稜線下の草付き斜面へ突き上げる支流に入るため、地図と睨み合わせて合流点を間違わないように注意する。
この沢の合流点は2mほどの滝状になっており、うっかりすると見落としやすい。
前回の経験で、滝から2つ目の沢へ入らなければならないことを事前研究していたので、間違えずに入ることができる。
次第に細くなっていく沢を詰めていくと、だんだんと稜線が近づいてくる。
ついに12時過ぎ沢の水がなくるも、ガレた沢を忠実に詰め、12:50赤木岳のコル下の草付きに飛び出す。
何とか間違えずに草付きに出られホッと一息。
間違うとハイマツのブッシュに突入してしまい難渋するそうである。
途中他のパーティーの誰とも出会うことがなかった。
ここで沢靴を脱ぎ、登山の服装に着替える。
ややガスが出始めたが、水晶岳から鷲羽岳方面がガスの中から時々顔をのぞかせる。
5時間にわたる楽しい沢歩きを終え、赤木岳の稜線に上がり、帰路に着く。
北ノ俣岳山頂から辿ってきた道を振り返る。
赤木平に陽が当たり、背後の裏銀方面の山も見える。
北ノ俣岳を下り、太郎山を越へ、太郎小屋から薬師峠のテント場に午後4時頃帰り着く。
朝から11時間近くの歩きに少々披露気味で、思わずテントの中で少し寝入ってしまう。
今日は夕方からの雨も降らず、午後5時過ぎから夕食の準備をし、楽しかった一日を振り返る。
今日も疲れて午後7時前にはシュラフに潜り込み就寝する。
8月28日(火)
いよいよ最終日になり、薬師岳に登った後帰宅する日である。
やや薄雲が出ているが、今日もまずまず天気はよさそうである。
朝4時に起床して朝食を食べ、テントはそのままにして5:00薬師岳に向けて身軽な荷物で出発する。
テント場からすぐ急な登りの大きな石がゴロゴロした沢状の道を登る。
30分ほどで視界が開けた薬師平という平坦地に出る。
コバイケイソウやチングルマなどのお花畑で、もう少し早いときれいなところである。
ここからは槍ヶ岳の鋭鋒が遠くによく見えている。
ここから薬師岳主稜線と東南稜に囲まれた開けた所に出る。
上の方には遭難碑が立っているのがよくわかる。
斜面をひと登りして、主稜線上に出る。
昨日行った黒部五郎岳方面や西には白山連峰が雲の上に浮かんでいる。
稜線を10分ほど歩いて、6:14、2年前に建て替わったばかりの綺麗な薬師岳小屋に出る。
ここから岩クズの中をジグザグに付けられた急斜面を登る。
登る途中からは太郎平方面がよく見える。
登りきると、遭難碑の建つ東南稜分岐に出る。
愛知大学生13人が吹雪の中を東南陵に迷い込み、大量遭難をしたところである。
すぐ先には薬師岳本峰がすぐ近くに見える。
15分ほど歩き午前7時過ぎ祠と三角点の建つ薬師岳山頂に立つ。
山頂からは360度の大展望が広がる。
北には立山、剱岳、北東には白馬から五竜岳、鹿島槍方面、すぐ東には大きな赤牛岳から水晶岳、その後ろにはうっすらと富士山も頭を出している。
更に南東には槍ヶ岳から穂高岳、乗鞍岳、御嶽山と飽きることのない大展望が広がる。
眼下には薬師岳カールが大きく湾曲している。
ゆっくりと眺望を楽しみ7時半前下山にかかる。
下に赤い屋根の薬師岳小屋を見ながら下山する。
駆け足で下山し、8:45テント場に下りてくる。
テントを撤収して午前10時前下山にかかる。
太郎小屋前では、ガスがかかり始めた最後の薬師岳を目に焼き付けて下山を開始する。

下りに入る頃にはガスが一面に湧き上がり、まったく展望はきかない。
沢用具などがまだ濡れており、あまり軽くならないザックを背負って登ってきた道を下山し、13:45折立の登山口にやっと下り立つ。
有峰林道出口の温泉で3日間の汗を流し、午後8時名古屋に帰り着く。
今回の山行は、久しぶりのテント山行で思ったよりハードな山行であった。
2年前に行った赤木沢の素晴らしさを山仲間にも体験してもらいたいと、鈴鹿の愛知川などで事前にトレーニングを積んで出かけたが、期待に違わない赤木沢の景観に二人とも満足そうであった。
今年の夏山の予定もほぼ終わったが、天候に恵まれ、いずれの山行も思い出深いものになった。
山遊人