6月12日(日)
梅雨の晴れ間の一日、山仲間と北アルプス後立山連峰の針ノ木岳に山行する。
午前2時に名古屋を出て、中央道を走り豊科ICから大町を通り扇沢の駐車場に午前5時過ぎに到着する。
やや曇ってはいるが、何とか一日持ちそうな天気である。
支度を整え、午前5時半過ぎ扇沢の工事専用道路脇から登山道に入る。
2,3度舗装道路を横切り、20分ほどで針ノ木岳への登山道に入る。
目の前には残雪豊かな山々の稜線が見える。
森林の中の緩やかな道を登っていくと、途中の路肩にはキヌガサソウヤイワカガミなどが咲いている。
ブナ尾の林を抜けて、6時45分ごろ大沢小屋に到着し一服する。
小屋はまだ空いていない。
この小屋は「山を想えば人恋し、人を想えば山恋し」で有名な北アルプス開拓の先駆者「百瀬新太郎」が建てた小屋である。
小屋からしばらく登り、左の針ノ木雪渓に下りる。
いよいよここから日本三大雪渓の一つ針ノ木大雪渓を針ノ木峠まで約3時間の登りである。
6年前に来たときに比べると今年は残雪が多く、しばらく行ったところでアイゼンを着ける。
徐々に急になる雪渓を登っていく。
途中で単独行の若者に抜かれる。
先には3人のパーティーが上の方に小さく見える。
途中から見下ろす大雪渓の向こうには爺ヶ岳が端正な形で聳えている。
マヤクボ沢の分岐を過ぎ、益々急になる雪渓を慎重に登る。
最後の急登をこなし、9:42やっと針ノ木小屋の建つ針ノ木峠に出る。
曇ってはいるが、峠からは周囲の山々がすべて見渡せる。
すぐ南にはコマクサで有名な蓮華岳が聳えている。
南には槍ヶ岳や穂高連峰も見ることができる。
北には後立山や白馬連峰の峰々が見渡せる。
少し休憩をして、右に折れ、針ノ木岳に向けて稜線の道を登る。
始めは岩稜歩きであったが、すぐに残雪の斜面をトラバースして高度を上げていく。
右手の谷に大きく切れ落ちているので細心の注意で斜面のトラバースをする。
山頂直下の10mほどのコブは垂直に近い壁になっており、慎重にステップカットで登りきる。
午前11時、針ノ木岳の山頂に立つ。
山頂からの眺めは素晴らしく、眼下の黒部ダムの上には立山連峰や剱岳が聳えている。
白馬連峰と後立山方面
瀬ダムの上には槍穂高
蓮華岳方面
30分ほど休憩をした後下山にかかる。
直下のコブの下りでは、気温が上がり雪がグサグサになっているのでとても滑りやすく、苦労をして下まで下りる。
途中のトラバース箇所も下りでは足場がとても滑りやすく、細心の注意を払っていたが一瞬足場が崩れて左手の谷へ滑落してしまう。(地形図で見ると滑落した個所がよくわかる)
体勢を立て直し、ピッケルで何とか制動を試みるも、スピードがついてなかなか止まらない。
100m以上滑落し、傾斜がやや緩やかになったところで何とか制動をかけることができる。
ズボンが破れた程度で、幸いどこも怪我もなく歩くことができたので、稜線まで滑り落ちた斜面を登り返す。
初めての滑落という経験でビックリしたが、大事に至らずほんとうによかった。
午後1時前に峠に戻り、針ノ木雪渓を下って15:15扇沢に戻ってくる。
帰りに温泉で汗を流し、午後9時前に名古屋に戻る。
梅雨の晴れ間を狙っての山行であったが、一日何とか天気も持ち、展望も得られることができた。
針ノ木岳は、以前登った時に体調が悪く、山頂少し手前でリタイアをしてしまった山であった。
今回やっと山頂に立つことができ感慨深いものがあった。
ただ、滑落という一歩間違えば大事故にもつながるようなことになり、山の怖さを体感できた山行であった。
どのような場合も慎重な上にも慎重に行動することが大切であることを学んだ山行であった。
山遊人