10月22日(金)~24日(日)
所属する会の指導者研修で、北アルプスの笠ヶ岳から連なる錫杖岳に山行する。
錫杖岳は、全山岩山と言ってもいいくらい垂直の岩壁でできた山であり、ロッククライマー達に好かれている山である。
登山道のない岩稜帯歩きの習得を目標として、2泊3日のテント山行である。
リ-ダーを含め4人の参加である。
10月22日(金) 曇り 朝7時前に集合し、車で東海北陸道を走り、高山から平湯を経て、奥飛騨温泉郷の槍見温泉駐車場に9:50に着く。
今日はテントサイトまで2時間半ほどの行程であり急ぐ必要もないので駐車場で昼食を食べる。
念のためアイゼンを用意してきたが、今年はまだ雪がきておらず、今回は必要がないということで車に置いていく。
天気予報では晴れの予報であったが、雲が多く、山の上の方はガスで隠れている。
あたりの紅葉はもう少しというところである。
車道を横切り、槍見館の横を通り、クリヤ谷からの笠ヶ岳への登山口を左に入り、山腹を登り始める。
最初から樹林帯の中のかなりの勾配の道を高度を上げていく。
テント山行のため荷物が大きく、汗が噴出してくる。
1時間ほどで錫杖沢右岸の岩がゴロゴロする滑りやすい個所を通り、反対側に渡り返す。
登につれあたりの紅葉はだいぶ進んでおり、ガスの間から錫杖岳前衛フェースの岩場が見え隠れする。
急坂を登るとしばらくで左から錫杖沢が合流する出合に着く。
この出会は錫杖岳の壁を登るクライマーたちがテント場にしており、4、5張は張ることができる。
しばらく休憩して、今日テントを張ることを予定しているこの上の岩小屋へ向け錫杖沢を登る。
沢の左岸の巻き道を30分ほど登ると左手に岩小屋が見えてくる。
ここはオーバーハングした岩が覆いかぶさり、雨露をしのぐことができる絶好の場所であるが、すでに先客がテントを張っており、ここに張ることは断念する。
また錫杖沢出合まで戻り、河原にテントを設営する。
まだ時間も早いので、テントの中でゆっくりとしていると、いくつかのパーティーが上がってくる。
今日の夕食はきのこ鍋で、皆で鍋をつつきながらかつてリーダーが若かりしときに登った壁の話などを聞く。
風もなくあまり寒さを感じない天候で、明日の晴天を期待しつつ8時頃就寝する。
夜中にトイレのため外に出ると、ガスが晴れ星も少し出ている。
10月23日(土) 快晴
朝5時半に起床し、外に出ると明るくなりかけた空には雲もなく、絶好の登山日和が予想される。
朝食を済まし、準備をして7時半前錫杖岳に向けて出発する。
今日は軽い荷物でサブザックなので、急な谷の遡行が続き助かる。
昨日登った岩小屋までの巻き道を通り、岩小屋からは錫杖沢の中を忠実に詰めて高度を上げていく。
頭上には朝日に輝く前衛フェースがそそり立っている。
途中左右に沢を分けながら、ほぼ直登する。
だんだんと沢は狭まり、残置されたロープの下がった大きな岩を登るころ水も枯れてくる。
1時間ほどで正面フェース下に出る沢を分け、左手の沢を詰める。
狭いササが茂る沢を詰めるも途中で道を間違えてしまい急な草付きの斜面が上がれない。
リーダの的確な指示で正しい道に戻り、最後の稜線直下の急登をササをかき分け9時半前南尾根上の鞍部に着く。
針葉樹が生い茂り展望はきかないが、鞍部から右へ折れササをかき分けてしばらく進むと右手に穂高の連峰が見えてくる。
錫杖岳本峰まで3つほどピークを越していかねばならない。
踏み後はおおむね飛騨側についており、木の枝につかまりながら山頂を目指す。
途中一ヶ所ロープが設置されたザレた個所があり注意して通過する。
振り返ると三本槍の岩峰が垂直にそそり立っているのが見える。
鞍部から50分ほどで錫杖岳の狭い山頂に到着する。
遮るもののない山頂からの眺めは素晴らしいの一言に尽きる。
すぐ横に岩の上にはピッケルがささっており、ザイルが垂れ下がっている。
誰かの遭難碑か何かなのだろうか?
北に続く稜線の先には笠ヶ岳の山頂が見える。
東北には槍ヶ岳から穂高連峰が屏風のように連なっている。
槍ヶ岳から南岳
北穂高岳~奥穂高岳~西穂高岳
足元には烏帽子岩が小さく見える。
ほかに誰もいない山頂で1時間ほども展望を堪能し、11時半に下山にかかる。
来た道を戻り、鞍部を経て中央稜が正面に見えるところで休憩する。
「国連ビル」と呼ばれているらしいが、垂直な壁がそそり立っている。
何組かのクライマーが壁に取り付いているのが見える。
(2人小さく写っているのがわかりますか?)
リーダーも若い時には何十回も登ったそうである。
岩小屋を過ぎ、やっと巻き道に出てホッとしたのか、岩の上でツルリと滑ってお尻を打ってしまう。
午後2時前に出合のテント場に帰り着く。
夕食まで時間があるので、あたりの紅葉の景色を楽しんでいると、ヘリコプターが前衛フェースの上を何度も旋回しているのが見える。
また、遭難事故があったようである。
(後からのニュースでは、単独行の登山者が道を迷い岸壁の方へ行ってしまい、携帯電話で救助を要請したということである)
出合の大きな岩の上に30年ほど前に錫杖岳で遭難した方のプレートが設置してあり、ちょうどその会の方々が慰霊の登山に上がってみえる。
夕方ごろより雲が多くなり、明日の天候が心配である。
午後8時就寝。
10月24日(日) 曇りのち雨
朝起きると上空には雲が広がっている。
今日は本峰フェース下から烏帽子岩下部を周ってくる予定であったが、天候の崩れが予想されるため中止して下山することにする。
食事をしていると日曜日のため朝から多くのパーティーが登ってくる。
テントを撤収し、午前8時半下山にかかる。
ちょうど紅葉の盛りのブナ林の景色を楽しみながら下山する。
10時に槍見温泉駐車場に下山し、近くの温泉で汗を流し、午後4時前名古屋へ無事帰着する。
今回の山行では、登山道のない谷を詰めて山頂を目指すということで、地形図をよく把握しながらのルートファインディングが大切であった。
谷の上部で違った谷を詰めてしまし、リーダーの指示で正しいルートに引き返すということもあった。
稜線に出てからは、樹林帯の中の岩稜帯であったため、木につかまりながら登ることができ、そんなに苦労することもなかった。
テント山行であったが、前回の剱岳山行で学習し極力荷物を軽くしたため、登りもそんなにえらくなかった。
錫杖岳は全く登山道のない山であり、このような山行は初めて言ってもいいくらいだったので勉強になることが多かった。
これからもこのような研修山行に参加して経験を積んでいきたい。
最後に、いろいろとご指導いただいたリーダーと同行した仲間にお礼申し上げたい。
山遊人